JCGAデータベースの概要

JCGAデータベース構築の目的および概要

腫瘍のゲノム情報を調べ、その検査結果に基づき最適な治療を提供する「がん遺伝子パネル検査」が2019年6月より保険診療のもと開始されました。しかしながら、検査によって検出された遺伝子の変化が、発症や病態の進展にどのように関係しているのか、その変化は日本人においてどの程度の症例で検出されるものなのか、そして変化が検出された遺伝子はがんとどのような関係があるのかなど、担当医、患者およびその家族が調べ、検査結果に対する理解を深めることができる日本語で表記された情報源がありませんでした。これは、「がんゲノム医療」を発展および普及するうえで解決すべき重要な課題です。

そこで静岡がんセンターでは、当センターにおいて収集した日本人のがんゲノム情報を広く活用していただける環境を提供することを目的に、インターネットにおいて閲覧可能なデータベースJapanese version of the Cancer Genome Atlas (JCGA, 日本版がんゲノムアトラス)を、構築いたしました。
掲載されている情報は、2014年より当センターにて進めているゲノム解析研究「プロジェクトHOPE^＊」にて蓄積してきた、日本人がん患者約5,000症例の全エクソン解析の結果に基づいています^§。https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/cas.14290

静岡がんセンターは、厚生労働省が指定する「がんゲノム医療中核拠点病院」であり、このJCGAデータベースの公開および情報の更新を続けること、そして「がんゲノム医療」の学びの場としてのコンテンツの充実を行うことで、我が国の「がんゲノム医療」の発展および普及に今後も貢献していきます。

JCGAデータベース（プロジェクトHOPE）の特徴

日本人がん患者のゲノムデータベース
使いやすい日本語表記
保険適応となっているがん遺伝子パネル検査の対象遺伝子全てを網羅する460遺伝子について情報を提供
静岡がんセンターで治療を受けた患者約5,000人の全エクソン解析の解析結果に基づくゲノム情報を収載
全て静岡がんセンターの症例であることから、個々の症例のゲノム情報とすべての臨床データの突合、さらに臨床経過の追跡も可能であるため、今後の更新により予後や治療成績との関連性についても情報提供が可能
研究対象とするがん種を主要ながん種のみに限定していないため、症例数の少ない希少がん患者のゲノム情報も有している

JCGAデータベースプロジェクトの体制

プロジェクトマネージャー

芹澤昌邦　（静岡県立静岡がんセンター研究所新規薬剤開発・評価研究部　主任研究員）
広報・事務担当

水口魔己　(静岡県立静岡がんセンタープロジェクトHOPE/JCGA 事務局)

神山晋太郎（公益財団法人ふじのくに医療城下町推進機構ファルマバレーセンター事業推進部）
システム担当

佐藤啓史　（静岡県立静岡がんセンター　情報システム課）
プロジェクト責任者

浦上研一　（静岡県立静岡がんセンター研究所副所長）
プロジェクトHOPE^＊研究代表者

山口建　　（静岡県立静岡がんセンター総長）
　　

作成協力者

秋山靖人、大島啓一、畠山慶一、芦澤忠、飯塚明、大浪俊平、大浪澄子、堀内泰江、成岡茜、丸山宏二、望月徹、釼持広知、笹賀香苗、齊藤直美、勝又千紗、長嶋剛史、下田勇治、平林庸司、三宅克正
作成協力診療科

脳神経外科、頭頸部外科、呼吸器外科、食道外科、胃外科、大腸外科、肝・胆・膵外科、乳腺センター、乳腺外科、婦人科、泌尿器科、眼科、皮膚科、整形外科、小児科、病理診断科、ゲノム医療支援室、遺伝カウンセリング室
サイト構築、保守運用担当

SCSK

* プロジェクトHOPEは、静岡がんセンター、㈱エスアールエル、エスアールエル・静岡がんセンター共同検査機構㈱の共同研究です。
^§ Japanese version of The Cancer Genome Atlas, JCGA, established using fresh frozen tumors obtained from 5143 cancer patients.
Cancer Science 111(2):687-699, 2020